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あおぞらブログ


【明石邦彦のつぶやき】ワーキングメモリーの容量と結晶性知能 2026/1/19
 自閉症(ASD)の人はワーキングメモリー(WM)の容量が小さいといわれている。そのために色々と用件を伝えても、覚えているのは最後の一つくらいであるとの話もある。私は講演会の聴講が苦手である。資料がある講演会形式なら書き込みをしながら聞けるので、記憶をたどることができる。耳から入ってくる言葉を頭の中で理解し、記憶に留めていくのは私の脳ではなかなか難しいものがある。傾聴し、その言葉の一つ一つを記憶しようという心が強すぎて、自分の記憶容量をはるかに超えてしまうと頭が真っ白になってしまう。WMの話とは別に、記憶には短期、中期、長期とあり、文言を何度も繰り返すことで長期的な記憶につながるようである。私の場合は何度も文字に書いて記憶することで、頭の中にとどめて、長期的記憶に繋げるのが常である。特に試験の前はこのようなやり方で100点を取るように努力したものである。本に目を通すだけでは短期の記憶にもつながらなかった。
 昔、大学の講義を受けている時、先生の話を聞こうとするあまり、熱心に先生の顔を見つめていた。授業中は先生の話されることを理解するには先生の発する言葉をすべて傾聴するしかないという思いであった。じっと見続けていると私の視線を気にした先生は「君は私の顔をじっと見ているけれど何か不審な点でもあるのかね」と尋ねられた。一瞬ぽかんとしてしまったが、「傾聴の習慣です」とも言うことができず、立ち往生してしまった。それ以来、その先生の顔を見るのは控えさせていただいた。じっと見られると気持ちが悪いのだろうと理解した。でも、他の先生だとじっと話を聞く癖は今でも健在である。  
 味の素時代、研究所で拝見した皇太子(現上皇)が研究員に対して質問し、返事を聞く態度は感心した。研究員の話を最後まで聞いてから、会話をするようにされていた。その姿が頭の中に焼き付いているので、私は相手の話の途中で質問することはしないように心がけている(冗長な話を相手がする場合は別であるが)。そして、傾聴の後に相手の目を見ながら対話するように努めている。ASDの人からジーっと見られると人によっては気持ち良いものではないようだ。ASD気味のHさんの大きな瞳でジーっと見られると他の人は理由がわからないので、痴漢ではないかと警察に届け出られることもある。Hさんに「ジーっと見るのは良くないよ」と注意してもASDの人は繰り返すのが常である。本人にとってはなぜ注意を受けるのかはわからないこともある。他人の気持ちを斟酌する力は弱いので、難しいことなのだ。WM容量の小ささも相まって注意された言葉の意味は長くは記憶されない。しかし、WMの容量が小さくても繰り返し記憶すると長期的記憶になることだろう。我が息子も小さいころの記憶が鮮明で、日付のレベルまで覚えている。ある事例の質問をすると「何月何日にそれがありました」と言葉を発する。何回も言葉を繰り返し、文字に書きなどして、長期の記憶につなげているのだろう。私も繰り返し、学ぶことで記憶の中に知識が定着している。今では記憶に刻まれている知識を活用しながら生活を続けているようなものだ。年を経るに従って、整理する技術にも長けてきたので、今の自分があると考えている。
 前回、流動性知能と結晶性知能について話題にしたが、長期的記憶が結晶性知能につながっているのではという例が思い出された。私は33歳の時に中央研究所から佐賀市諸富の九州工場に異動した。それから5年後、中央研究所に復帰した。5号館2階の研究室に在籍したころである。ある時、2階の菌株保存庫を改造して、顧問室が作られた。東大の山田先生(発酵学の重鎮)が退任されて味の素の顧問となられたからである。そして、研究指導をされることになり、顧問室が用意されたのである。私が先生のお守役となるようにおおせつかった。先生が来訪される時は我が研究室の研究指導を仰ぐようにとのことである。月に一度、先生が来られた時に発酵の研究室のテーマを紹介し、課題解決に向けて先生のお力をいただく時の仲介役である。私も新進気鋭の研究員であるので、先生とは活発な論議となる。私は年齢相応の流動性知能で対応した。新たな発見につながる研究になるように先導するのが私の役割だった。先生は今まで培われた知識で、明快な答えを述べられるとともに、研究の方向性についての指示をたくさんいただいた。その時、「東大の先生ってすごいな。」と思ったものである。今から考えると先生は積み上げられた多くの知識の中から共通性を見つけて適切な指示をされたのだなと思う。今でいう結晶性知能の発揮である。課題の整理の仕方も研ぎ澄まされており、学会向けの研究報文にするための指針をいくつも与えられたように思う。今考えれば結晶性知能の最たる例であろう。
 私はASDの中で、アスペルガータイプであるので、普通の人とはいささか物の見方が少し変わっていると思う。他の人とは視点が違うので、出てくる分析が皆とは違っていた。一芸に秀でることで「良し」とする気質である「己が姿」が今である。この年になって思うのは若いころに集中していた時に磨かれた知識が記憶の中に健在で、年齢が上がるにつれて整理術が高まってきたように思う。妙に納得のいく事例を思い出してしまった。





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