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【明石邦彦のつぶやき】確認の大切さが理解を深める |
2025/12/12 |
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人の発言を聞く側として注意しなければならないのは「それが正しいもの」と鵜呑みにすることである。確かめる作業をやらないと足元をすくわれる話になってしまう。自分の考え方を形成していく場合においても事実の確認が必要だ。いま、中国と高市首相の間で火花が散っている問題もまさに確認の必要があると思われた。
台湾有事についての高市首相の答弁がなされ、「存立の危機事態になりうる」と断言し、中国との対立が生じている。この問題に対しては田中角栄首相と周恩来首相とが締結した日中共同声明(1972年)に端を発する。私たちは日中共同声明の中身を理解・確認しなければ、今回の騒動の意味が理解できないだろう。論争となる原因を探らないことには中国側と日本側の態度を理解できないと考える。そこで、日本VS中国、日本VS台湾、米国VS台湾との関係を調べて考えてみたい。ただ、調査するといっても一つ一つの確認作業は困難であるので、調べられる資料には限界がある。細かな部分というよりは通説としての捉え方での判断となる。
まずは日本と中国の関係である。キーポイントは日中共同声明である。日中共同声明で台湾のことをどのように考えているかが記されている部分は2つに分かれているようだ。
①台湾は中国の一部である。
②台湾については中国のものと主張されているが、日本は同意したわけではない。
と表現している。
当時の大平外相は日中条約を結んだ時の発言として「中華人民共和国政府と台湾との間の対立の問題は基本的に中国の国内問題であると考えます。わが国としては、この問題が当事者間で平和的に解決されることを希望するものであり、かつ、この問題が武力紛争に発展する可能性はないと考えております。なお、安保条約の運用につきましては、わが国としては、今後の日中両国間の友好関係を念頭に置いて慎重に配慮する所存でございます。」と述べたに過ぎない。
これは含みを持たせた発言ではあるが、現実に日本は台湾を国家承認していないので、中国は一つという考え方で臨むべきと考える。2か所の文言から日本の主張は「台湾は中国の一部というのは認めながらも、すべてを了解しているわけでは無い」という点だ。しかしながら、有事になればすぐに助け船を出せる状態ではないことは明白である。ネトウヨを含めた安倍氏らの考え方(高市首相はこの考え方)はこの一文を根拠にして「有事の際は」と言っているだけの話で、国際的には台湾を国家として認めていないのであるから中国による台湾への侵攻は内戦の一部であると考えるのが一般的と思う。高市首相の言う「存立の危機」とは片腹痛いことになる。中国にとっては「余計なことは言うな」の論理である。
日本が戦争をする気なら本格的に軍備を整えていなければならない。有事に備える準備をしていなければ国民の命を守る話にはならないので、言葉の火遊びでしかない。言葉の意味を理解して国会で議論をしてほしいものだ。何事も契約書(日中共同声明)をしっかり読んで理解しないと問題だと思う。人から聞いて発言したことが間違っているとしたなら、信用問題となる。実際の条文を確認しないと自分の考え方を確立することはできないと自覚すべきである。
次に、日本が台湾有事の際に台湾を助けるという日台安保条約を結んでいるかどうかが問題である。「中国から台湾が攻められたときに手助けします」という約束を結んでいるかである。今のままだと日台とは同盟の関係ではないので、有事が起きても台湾の戦争に参戦できないと考える。また、「台湾とは密接な関係である」という理由で、自衛隊を出動させる(集団的自衛権)という判断はできない。「密接な関係」という定義が必要である。
戦闘となるとあっという間に拡大の一途をたどることになるだろう。強大な中国に対して日本が1国で対応できるとは考えられない。好戦的な高市首相たちで処理できる問題ではないと考える。自衛隊は小さな兵力である。台湾での局地戦ならいざ知らず、中国からミサイルがありとあらゆる地点に飛んできたら、木っ端微塵にやられて終わりである。現状では専守防衛で火の粉を浴びないという策をとるのが関の山である。
ただ、米国が東アジアのバランス(地政学的)が崩れるとして、台湾に出兵するケースがあるかもしれない。それには米国と台湾での安全保障の契約が必要だ。アメリカの法律として台湾関係法が1979年に制定され、「米軍の介入は義務ではなく、オプション(選択)である」とされた。なんとも曖昧な法律ではある。現に米国と台湾では武器の売買をめぐる契約があり、台湾の防衛力強化に役立っている。米国は半導体などの基幹産業を支えるためには大事な地域であろうから考え方を変えてはいくだろう。トランプ大統領ならどう動くかはわからないが、当面は高市首相に「静かにしていろ」と釘を指すだろう。
さて、オプションながら米国が台湾を助けるとして米国が出兵するとなると在日米軍基地から出兵すると考える。日米で安全保障条約を結んでいる関係上、日本も中国から攻撃を受けると考えるので、米国とともに参戦することになるだろう。即ち、米軍が参戦したら日本も参戦せざるを得ないという関係である。
素人なりに調査した結果で解釈すると「存立危機事態については、米軍がもし参戦した時には、日本は米国を助けなければならない関係だ。日米安全保障条約があるので、我々は米軍とともに戦わざるを得ない。しかし、日本としては平和的な解決を望んでいる。」となる。ただ、日本には態勢が整っていない現実があることを忘れてはならない。自衛隊が中国と対峙するために戦地に向かうのであれば大やけどをするのが落ちである。高市首相はなんとも確信のない話をしたのだろうか。はっきりと「米国が参戦した時には日本も協力しないといけない関係だ」と述べれば済む話だ。
威勢のよさに振り回されないためには自分なりの意見を持つことだ。そのためには確認という作業の大切さを感じた事例である。
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