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【明石邦彦のつぶやき】絶滅危惧種の再導入 |
2025/5/8 |
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絶滅の恐れがある動物などの種の保存のために、人の手で増殖を図り、その動物を自然界に定着させる試みは多い。良く知られている例は鳥である。コウノトリ(兵庫県)やトキ(佐渡島)が有名だ。私が趣味のカミキリの中ではユウスゲを食害するフサヒゲルリカミキリが有名になりつつある。カミキリ図鑑の中でも野生のフサヒゲカミキリの写真ではなく、足立区生物園で繁殖させた本種が掲載されるほど、野外での写真は少ない。ユウスゲも鹿の食害や、環境の変化で分布域が狭められつつある。本種にとってユウスゲは餌でもあり、産卵場所でもあるので、ユウスゲの存在が脅かされると一大事である。本種は絶滅危惧ⅠA類(環境省第4次レッドリスト)とされ、絶滅寸前として扱われている。何でも、以前は北海道、8県で生存が確認されていたが、2020年以降では長野県(美ヶ原高原?)と岡山県があげられ、2020年現在では岡山県でのみ確実に生存することが確認されている。その場所は岡山県真庭市の蒜山高原だそうだ。
環境省などでは環境が蒜山高原に似ている大山の枡水高原に昨年6月に雄雌合わせて102匹を放したとのことだ。枡水高原では1950年代を最後に確認されていないそうだ。その年の追跡調査によれば生存する個体とともに、ユウスゲの食痕、産卵も確認できたとのことだ。後は今年成虫が確認されると本種の定着が一時的に確認されることになる。永続的に定着できるかは生育環境の維持に関わってくるだろう。このように絶滅危惧種を違った場所で増やすという表現は「再導入」と呼ばれる。本種の繁殖にあたっては足立区生物園、伊丹市昆虫館が担当し、蒜山地区での草原再生などにあたっては日本チョウ類保全協会が全面協力したそうだ。珍しいカミキリなので、密猟の危険性はあるが、昆虫採集者のモラルに依存するしかない。しかしながら、道路の開発や観光地化により植物層の激減(鹿の食害もある)に注目しないと意味がないのではと思う。昆虫採集者の乱獲よりは自然の環境破壊の方が大きいと思うのだが。観光地化によりとみに植物層が減少していると思う。
写真1.フサヒゲルリカミキリ 2.蒜山(ヒルゼン)高原
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