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【明石邦彦のつぶやき】転居に備えて身辺整理 |
2024/12/10 |
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転居のために、我が部屋の断捨離を続けている。腰の痛みもあって整理を続けると痛みも増してくる。お陰で湿布薬が体の至る所に貼られることになり、1日の消費量も馬鹿にならないようになった。
昨日は味の素時代の書類整理に取り掛かった。一つ一つ見ていくとなかなか捨てる決断がつかなくなる。しかし、残りの人生を考えると「いや捨てるべきだ」という考え方も出て、心の中で葛藤が続く。何度も心に尋ねながらごみ袋にポイである。まずは、農工大や九州大で講師を務めた時の資料処理に取り掛かった。バイオテクノロジー概論、発酵工学の講師として学生の皆さんに配った資料や講義内容の控えが出てきた。これらは一部冊子にしたものもある。しかし、これは原稿であるので、捨てるべきと判断した。また、自分の博士論文の原稿もでてきた。これは製本があり、かつ国立図書館にも所蔵されているので、捨てることにした。昔はワープロもまだ発展していなかったので、手書きの原稿である。自分の個性ある文字が並んでいるので、懐かしい。ただ、学会に投稿した論文6報の別刷りは薄いので、量としては少ない。これは一部ずつを残すことにした。また、学会や博士論文の発表会でのスライドは思い出深いものがある。これは嵩張るが、軽いので、残すことにした。また、味の素の経営企画部時代の企業戦略の原稿は出来る限り捨てることに決めた。経営企画の中枢にいた時は色々な立案に携わっていたのだなと思った。今ではこんなことを考えるのは到底出来ないなと思ったりした。整理が進むにつれ、MSG(グルタミン酸ソーダ)の製造および販売戦略の分厚い資料が出てきた。色々な報告書を書きあげてきたが、一番の思い出深い戦略作りであった。もちろん、コンサルタントを入れての味の素社のバイオ戦略や、日本のバイオ戦略作りも思い出深いが、これは他人の手を借りながらの戦略作りと一線を画するものである。ほとんどが自分のアイディアで作り上げたものだから生の原稿が残っている。何せプロジェクトメンバーは私一人が技術系で、他は文系の人が何人か参加したくらいである。私は本社の横にあった食の文化センターの資料室に籠って、世界の料理を調べながらその国の調味料の歴史を探った。わからない調味料は文献を調べたり、経営企画部の女性に尋ねて、知見を深めた。この戦略のベースはMSGの味が世界のどの地域で受け入れられて、今後のMSGの製造および販売戦略をどのように構築すべきかを探求し、提言するものである。立地や製造戦略は自分の技術領域であるので、今までの知識と他社の製造方法・生産量、技術報告から戦略は作れるのであるが、私には販売戦略はよくわからない。文系の人はバザール(市場)の端から端まで売り込むのが戦略だという方もいたが、それでは戦略にならないと考えて、どのような料理がその国の特徴か、また、どのような調味料を使っているのかを把握した上での戦略作りが必要だと考えたからである。そのため、食の文化センターの資料室で各国の料理の特徴を調べた。その結果、バターなどのオイルの中では舌の味蕾がオイルでマスキングされ鈍感になり、MSGのシャープな味は特徴を発揮できないと考えた。逆に、オイルを多用しない異なる食文化の地域ではその国の料理の味は淡泊なので、切れの良いうま味を持つMSGの味が受け入れられるようだ。これらの国のGDPの進展具合いで大量消費が可能ではないかと推測した。その考えのもとにMSGを販売する営業方針を描いて見せた。この戦略を経営会議に上申した所、当時の江頭社長の目に留まった。そして、有力な戦略案として認められ、マル秘文書として10冊ほど製本し、しかるべき部署に配布された。文系の人とは違った物の見方が企業戦略を確たるものにする例であろう。懐かしいが、世の中に出すべき資料ではないの、廃棄処分に廻した。
一つ一つの資料をみて、考えながら断捨離をしてゆくと時間がかかり整理は進まない。引っ越し迄あと1か月なのに。「思い切り、思い切り、捨てよう!」と思うのだが、そうはいかない。苦闘は当分続きそうだ。
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