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【理事長 明石邦彦のつぶやき】クロサワヘリグロ（ハナカミキリ）との遭遇 |
2023/6/1 |
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５月２７日の採集行は天気が晴れとなり、絶好の採集日和となった。前年採集したクロサワヘリグロを今年も大峠で採集しようと考えた。午前中はペンションすずらん付近（焼山沢真木林道、嵯峨塩深沢林道、砥山林道：甲州市）で採集し、午後は大峠、真木温泉付近（大月市）を考えた。前年は６月半ばの採集だったが、よくよく調べてみると真木で５月５日の記録があり、高度が低いところで採集できるチャンスがあると考えた。２週間前も偵察に訪れたのであるが、その時は温度が低く（１５℃以下）、雨模様でもあったので、ウツギの花でフタオビノミハナがとれるぐらいであった。昨年とったクロサワヘリグロはミズキの花だったので、ミズキの花に飛来する虫に焦点を当てた。一般的にクロサワヘリグロが採集されたというウツギの花は「絶対というよりはなかなか採れない」と考え、ウツギの花で時間を浪費するのをやめた。また、できるだけミズキの満開の花に絞ることにした。特に、ミズキの花が咲いている高度８００ｍから１１００ｍまでとした。この日の大月の気温が午後は２４℃から２１℃まで緩やかに低下する予報である。朝の気温２０℃以下よりクロサワヘリグロは活発に活動すると思われるので、遭遇するチャンスは高いと思った。
最初の焼山沢真木林道は日が当たらないので、カエデの花が残っているとして、カエデの木を探した。結果、湯ノ沢峠の登り口で何本もの満開の花に出会った。６ｍから９ｍの長竿を駆使したところピドニアやアオバホソハナなどがとれたが、数は多くない。湯ノ沢峠の分岐点にはいかず、ペンションスすずらんへの道（県道２１８）に引き返し、嵯峨塩深沢林道に出かけた。そうすると一本のカマツカの花が満開であった。皆さんに花での採集を任せ、私は切り出している広葉樹や落葉松の貯木を見ることにした。花にはカラカネハナ、シロトラ、ホソトラなどがたくさんとれていた。このように、春先の花でカミキリがたくさん捕れるのは珍しいので、皆さんは大喜びである。私は伐採木に飛来したオオマルクビヒラタなどをとり、こちらも満足である。伐採木の小枝が道端に積み上げられているので、夏はルリボシがとれそうだ。その後、砥山林道に向かったが、有力な花がないので、途中で引き返し、ペンションすずらんでの昼食とした。女将さんと話をし、館長さんにご挨拶した。館長さんには７月の宿泊時の夜間採集に使うライトの設置について確認した。使い方を教えていただければ操作はできそうである。館長さんはコナラの大木にドリルで穴を開け、椎茸菌糸の打ち込みをされていた。「まだ、カミキリムシはあまり出ていない」との話であった。このような高さ（１４００ｍ）では早春の位置づけなので、虫の出はよくないとのことだろう。天ぷらそばを食べ終わり、早速真木まで出かけることにした。
大峠までの道路脇に咲いているミズキの花を掬ってみてもカミキリは少なく、ピドニアばかりだ。何気なく、下からミズキの花を見ていると青い空をバックに１ｃｍ程度の黒いカミキリが飛んでいるのに気が付いた。今にも花にとまりそうである。４ｍ程度の高さであるので、６ｍの竿で十分に届く距離である。私はすぐに飛び方からクロサワヘリグロと確信し、花ごと網をかぶせて採集した。網をのぞいてみると橙色に黒の線が入ったカミキリが網の中を歩いている。すぐに「取った！」と大声を上げた。昨年採取した個体は黄色味が強かったが、今回採集したものは橙色で図鑑に掲載されている虫と同じである。触角の長いところを見ると雄と思われた。昨年は黄色のカミキリが崖下のミズキの花にとまったようなので、掬ってみたところ２匹のクロサワヘリグロが採取できた。昨年とった実績があるので、飛んでいる姿だけからクロサワヘリグロと確信した。上と下から見るクロサワヘリグロの感じはだいぶ違っており、下からは黒い感じであった。飛び方もブーンという感じで、ブンブンと飛び回るヒゲジロハナやニンフハナとは明らかに差異がある。
まだ、高度を上げるとミズキがあるので、調べたが、蕾が多いのでこれからであろう。過去の積み上げられたデータを紐解き、自分なりの仮説を作り、それが実現することは私にとっては最高の喜びである。今年も晴れれば順調に成果が上がりそうだ。
写真：1.クロサワヘリグロハナカミキリ 2.真木小金沢林道から見た富士山（菅原さん撮影）
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