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【理事長 明石邦彦のつぶやき】分水嶺の踏破が真榊の話に振り替わった 2022/12/13
 昼食の用意をしていたらBS番組で山歩きの番組が放送された。百名山としての画面表示があったが、関西の百名山であり、深田久弥の日本百名山とは異なるようだ。田中陽希さんが登った3百名山の中に入るものかもしれないが、私には見た記憶がない。山のガイドの方は植物に明るいようで山々の花や樹木を説明してくれた。これから登る山は高山ではなく、低山のようで800mくらいの山である。私は近畿の山はあまり知らないが、赤坂山と大平山という2山を目指しての縦走である。木々が色づいていることより晩秋の山旅のようだ。放送後、番組を確認すると11月28日に放映されていたものの再放送であった。ガイドさんは黄色に色づいたカツラの葉や杉の木の下でα―ピネンのフィトンチッドを味わったり、リンドウ、センブリなどの花を示したりしながらこの山の豊かな植物層を説明してくれた。素人向けにどんぐりの実を示し、アベマキ、コナラ、ミズナラの違いを説明した。子供さんが見て喜びそうな教材である。植物の説明は本題ではなく、これらの山への登頂が中央分水嶺(後で調べると高島トレイル)の一端を垣間見るように企画されたものであろう。ガイドさんはこの分水嶺踏破で日本海側に流れる水と太平洋側に流れる水のそれぞれの水場を案内してくれた。山に降った雨が右と左で流れ込む海が違うというまさに境目である。本来の番組は晩秋の分水嶺を歩き、紅葉した景色と眼下に見下ろす景色とを紹介したいのであろうが、私は植物ばかりが目についた。また、内容はよく覚えていないが、植物の紹介の中でマサカキの紹介があった。マサカキの葉は神様にお供えするものである。特に、時の首相が靖国神社の神事への参加を意味する「マサカキ奉納」で耳にする植物名である。マサカキは一般には西日本に多く、関東ではあまり自生していないようである。関東では一部、庭専用で植えてあるのを見かけることはあるが、一般にヒサカキが庭に植えてあることが多い。関東の山(天城山など)でマサカキを探したけれどヒサカキばかりであったと記憶している。お店では神棚用に販売されるのはマサカキであり、神事用に栽培されたものであろう。私はいまだヒサカキの販売は目にしたことはない。しかし、調べてみると関東以北ではマサカキがないので、ヒサカキが代用されるとのことであった。漢字でそれぞれを書いてみるとマサカキは真榊と書き、ヒサカキは非榊とも書くようである。真と非の違いが面白いなと思った。いずれにしてもこれらの花の匂いはあまり好きな匂いではない。神様が神棚へのお供えものとして虫がつかないように工夫された結果なのであろう。この二つの木の区別は葉を見れば一目瞭然である。マサカキの葉は大きく、周辺は丸みがあるが、ヒサカキの葉は少し小さく、周辺にギザギザがあるのでわかる。私はマサカキの葉を購入せずにベランダにあるヒサカキの葉を神棚に供えるが、1か月は持つので重宝している。最近、この木を庭木にしているところは少なくなった。3-4本大きなヒサカキの木が庭に植えてある邸宅も、代替わりであろうワンルームマンションに建て替えられた。立派なヒサカキもすべて抜き取られ、大きな石だけが残された。ヒサカキはあまりにも地味すぎる木であるからだろう。誰も神棚用に必要とは思わず、残すことを考えない時代になった。神様に対し少し距離を置くようになった世相の故だろう。

写真:1.マサカキ 2.ヒサカキ


 



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