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【理事長 明石邦彦のつぶやき】目力ゆえの難題 |
2021/12/24 |
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オウム返しの返事とか、動くものをジーっと見つめ続けるとか、ASDの特徴を持つ男性がいる。彼はいつも人の顔をジーっと見るので、なぜ見るのかが気になった利用者とトラブルになることが多い。本人はどこに興味があるのかはわからないが、大きな目でジーっと見ている時間が長いと他人は気になってしまうのだろう。ただ、彼は暴力をふるう性癖はない。むしろ暴力を振るわれる立場であるので、相手から問われると黙ったまま固まってしまう。逃げることを知らないので、いじめられやすい性質を持っている。
先日、久しぶりに警察から問い合わせの電話が入った。今回は不審に思った女性が警察に110番してきたようだ。理由は通勤の道筋が同じであったことと、目が鋭いので、まとわりつかれているイメージでの110番であったようだ。最初、警察は母親や施設の人に連絡しようとしたが、言葉が通じないので、あおぞら共生会の事務局に電話してきたとのことである。事務局は彼にASD(自閉症)の障害があることを伝えたら、警察の方から障害特性など、彼の特徴を知りたいので、訪ねてくるとの話である。警察は電話を受けて、調べた以上、調書でも作る必要があるのであろう。来所された警官にASDの特徴と対応を説明するとともに、今後のこともあるので写真(母親の了解済み)を取り、一件落着である。
何年か前になるが、彼は朝の通勤列車の中で同様な問題が持ち上がったことがある。通学するJK(女子高校生)は彼の目線が気になり、痴漢や犯罪者と思ったようである。彼はそのJKがかわいいとでも思ったのかもしれないが、ジーっと見ていたことが何回かあったようである。そのため、不安になったJKは警察に届け出て、取り締まりをお願いした。その後、警察はJKが乗る電車に張り込んだ。そして、彼は挙動不審者として警察に連れていかれた。別に犯罪的な行為はしていないことがわかったが、連絡を受けた母親は動揺して上申書を書いたようである。この報告を受けて、法人としては幾つかの対策を考えた。幾つかを上げてみると①同じ列車に乗る場合は号車を変える。又は乗車時間を変えるなりして、JKと会わないようにする。当分の間、職員が通所の行き帰りに付き添う。②対策の一つとしてマスクをする(目がさらされるので意味ないと思うが)。目線は中吊り広告を見るか、ジーっと見ないで、常にほかの対象に目を移す。③車中ではゲームをするなどの対策である。障害の特性に寄り添った素晴らしい対応とは思えないので、当然のことながら良い結果は得られてはいない。乗車時間を変えた件(JKとは会わない)だけが見かけ上の解決策であった。この事件後、注意した点はASDという障害特性もあるので、「上申書への記入は避けること。記入を迫られたら上司に伝えて判断すると答えるように」と。なお、「改善に努めます。2度とやらせません」などは言ってはいけない。一生、障害特性が変えられないことも考えられるので、簡単に約束すると後でその言に縛られることになりかねないと注意した。障害特性を改善するには相当の時間を要するとともに必ず直せるという話でもないからである。当人の権利を侵害するようなことは避けるべきとの考えでもある。言ったらすぐに改善できるなど「ゆめゆめ思うことなかれ」だ。警察の方もASDの特性を理解してもらわないとまずいと思う。これからも出会うであろうASDの方々への対応を間違えることになる。
さて、コロナのためマスクが必携となり、彼の睨むような、鋭い眼光は一層目力が増したように思える。コロナを収束させ、全体の顔が見える世の中にしなければいつまでも嫌疑をかけられ、何度か警察のお世話になることだろう。警察に保護された時には「ジーっと見ることはASDの特性の一部で、事件性はないから安心してください。」と警察から通報者に説明していただけると呼び出しは減りそうだ。警察との面談を重ねて、信頼関係を構築することも重要ですね。
普通、目力は説得力があるなど良い方に捉えるものだ。しかしながら、ジーっと見ているだけで何の意味も伝わらない目力は相手に恐怖心を植え付けるだけなので、改善の余地がありそうだ。「目は口ほどに物を言う」の例は情のある目つきの方がはるかに相手の心に訴えるものがあると教えられているのだが、そうはいかない例ともいえる。ASDについて造詣が深い高木先生に相談してみようである。
写真:目力を感じるのはどれだ!
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