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【理事長 明石邦彦のつぶやき】展翅(肢)作業 |
2021/10/20 |
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9月25日に大菩薩で採集したフジコブヤハズ(以後フジは略)を毒瓶から取り出し、足(脚)を伸ばして標本にしようとした。48頭の一塊から絡み合った脚や触角を1頭ずつバラバラにした。いつものように、展翅のためのピンセットを取り出し、体を固定しながら脚と触角を整えた。蝶の展翅(羽)とは違うので、カミキリムシでは6本脚を伸ばす意味で、展肢という言葉を使いたい。いつも使っているステンレス製のピンセットはストレートなタイプと先が曲がっているタイプがある。私はどちらともこだわりなく使っているが、脚と触角では使い方が違うのかもしれない。でも、昆虫専門店ではピンセットの使い方はどちらも同じような説明がなされている。
さて、毒瓶から出したばかりのコブヤハズは溶剤(酢酸エチル)が揮発していないので、色合いが鮮明ではない。そのため、溶剤が揮発する時間が必要だ。2時間ほどたってから1頭ずつ取り上げて展肢作業に入った。個体は乾燥させていないので、柔らかすぎて形が決まらない。まだまだ展肢作業は早すぎるようである。しかし、一応柔らかいなりに形を整えて台の上に並べていった。最終的には1-2週間ほどたってから展肢すると芸術的な姿に整えることができるだろう。48頭の塊の中からニセビロードカミキリが2頭混ざっていることがわかった。小型のコブヤハズと誤認したのであろうか。総数48頭と思っていたが、実際のコブヤハズの採集数は46頭である。普段ならニセビロードとコブヤハズをじっくり見れば見間違うはずがないと思うのだが・・・。最後の採集場所では忙しく歩き回ったので、小さなコブヤハズと見誤ったのかもしれない。また、毒瓶の綿の隙間に紛れている可能性もあるので、再度確認する必要がありそうだ。(後日、確認したが、毒瓶には虫は残っていなかった。)
さてさて、展肢作業に入ってみると大きなコブヤハズも結構たくさんいることが分かった。一つ一つ丁寧に脚を広げて、並べていくとなかなか壮観である。一般的にメスの体が大きいことはわかるが、オスでも結構立派な触角と体躯を持つものもいる。毒瓶の中で苦し紛れに他のコブヤハズの触角を噛み切ったのか、3頭ほど触角が欠けていた。残念である。昨年の反省から大型毒瓶を用意したのであるが、こうもたくさん採れると事故である。
なお、ステンレス製のピンセットで脚を広げていたが、もともとこのピンセットはスパンが8mm程度と狭く、体が小さなカミキリの展肢作業には向いているが、大型のカミキリには向いていないようだ。たまたま「すずらん」のおかみさんからいただいた竹製のピンセットを思い出した。巷の採集家が趣味で作られたとのことである。このピンセットは開きが大きいので、使いやすいことが分かった。ステンレス製とは違い、重くもなく、開きが少し大きい(15mm)ので、触角の曲がりの修正にも使いやすいことが分かった。しかし、一頭を丸ごとつかむと竹の表面はギザギザしていないので、挟み込むことができず、ピンと虫がはじけてしまう。少しギザギザを入れて滑り止めにしたらと思ったが、繊細な触角や脚の爪を触るには問題があるように思った。それを考えれば竹の先は5mm程度ツルツルで、それ以上はサンドペーパーなどでザラザラ(傷テープで巻く方法もある)にすればよいと思えた。今度「すずらん」に行ったときに1本買い求めて試作してみよう。また、48頭採ったと思っていたが、ニセビロード2頭が混ざっていたので、記録表を書き換えねばならない。いずれにしても間違いは私であろうから私の記録も21頭ではなく、19頭になるなと思った。ただ、柔らかいなりに46頭を一堂に並べてみるとコブヤハズの地味な色合いはいぶし銀のような味わいがある。かくして、この戦果を見ながらニヤニヤと旨酒を嗜むことになった。
10日後、再度展肢作業に取り掛かった。46頭を並べてみると個体差があるなと思った。
コブヤハズは飛べない虫なので、地域で特徴がある。2頭ほどおしりの形がハイブリッドのように感じるのもいることが分かった。八ヶ岳付近ではタニグチコブヤハズとフジコブヤハズの混棲地域があり、ハイブリッドも多いとのことであるので、一度訪れてみたいものである。
写真:1.ステンレス製ピンセット 2種類(ストレートとフック) 2.フジコブヤハズ46頭 展肢終了 3.まずは一杯 満足感=幸せ 採集してくれた人に乾杯!
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