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【理事長 明石邦彦のつぶやき】Nature投稿の報文から読み解くと |
2021/9/21 |
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夏から秋へ季節が変わり、首都圏でのコロナ感染者は8月15日の週を境に低減する傾向が認められている。東京、神奈川も10万人当たりの感染者数が30人台となり、緊急事態宣言レベルの感染者数25人を切るのももう少しという所まで来ている。9月30日までとされている緊急事態措置では新規感染者数の数値の25人以下となりそうであるが、重症者数などの数値までクリアできるかはよくわからない。専門家はまだまだ第4波の数値以上であると警鐘を鳴らしているが、人流は増える傾向である。今はシルバーウイークもあるので、人出はさらに拍車がかかるのではと思う。人は緊急事態慣れが常態化している。
さて、夜間の外出制限やワクチン接種の効果でコロナ感染者は減少してきたのであろうかという疑問は相変わらず持ち続けている。科学的なエビデンスでもって説明してほしいものだ。感染者の減少傾向は涼しくなって人間にも免疫力が上がってきたのであろうか、はたまたコロナウイルスはインフルエンザと同様に季節性のあるものなのかはいまだ解明されていない。
先週、山口のFさんから東大先端研の児玉先生の最新の談話(Nature報文に基づいた)が送られてきた。ユーチューブでの先生の説明によると内容は3点であると考えた。私の解釈が間違っていたらごめんなさいである。
①RNAワクチンの特徴として抗体(液性免疫)を作るだけでなく、CD8リンパ球(細胞性免疫)を誘導するとのことである。ウイルスを捕捉する抗体だけでなく、リンパ球の生成を誘導し、ウイルスに感染した細胞を殺すと話されている。そのためRNAワクチンを接種した人は重症化せず、死者も少ないということだ。イスラエルや英国の例を示された。
②コロナウイルスの特徴としてウイルスには増殖期と衰退期があり、どちらも1.5ケ月の周期で、総計3ケ月で波が収まるそうだ。今迄の波はそれぞれの変異株の増殖・衰退で説明されるとのこと。波を抑えるにはウイルスの集積地をつぶすことと、新たな変異株の侵入を許さないことだとのこと。集積地をつぶすことは残存ウイルスを低くし、変異するウイルスの数を極限まで減らすことを意味する。徹底的にPCR検査を実施し、感染源を潰すことにあるようだ。また、もしウイルスに侵入された時はワクチンなどで早期に対策することが必要だと述べられた。
③感染者の症状を把握するためにウイルスや抗体の量を測定し、その結果に基づき、症状別に対処すべきと言われた。例えば、A:ウイルスが多く、抗体が少ないケースは抗体カクテル療法、B:ウイルスが多く、抗体も多いケースはサイトカインストーム(免疫過剰)にならないように、早期治療としてステロイド等の免疫抑制剤を使用すべきとのことであった
Natureからの最新情報を含んでいるので、これらの考え方を取り入れたコロナ対策が必要となる。
①の論点については大阪のデータがぴったりだと思った。ワクチン接種有り無しで
重症化する率を比べたデータである。総数4759人の感染者で比較している。どれだけ科学的に正確にとらえられているかは知らないが、以下に紹介する。
感染者の重症化率
ワクチン接種 感染者 人 重症者 人 重症化率 %
未接種 4285 209 4.88
接種 474 2 0.42
まさに本当かと思うほどのデータである。ワクチン接種すると感染のしにくさとは別に重症化しない確率が約10倍違うとことになる。
ただ、児玉先生によるとウイルスが増殖期から衰退期に切り替わるのは何故かまだわかっていないそうだ。このような切り替わる原因を考え、仮説を考えることは研究者にとっては魅力あるテーマである。ただ、最先端のデータで解析したわけではないので、正確さにかける話である。しかしながら、研究者視点から見るとファイティングスピリットを惹起させる楽しみでもある。
私は昔バクテリオファージ(細菌のウイルス)の研究をしたことがある。その時にバクテリアは我が身を守るためにファージに対する耐性機構を次第に獲得するものだ。例えば、ファージが吸着する細胞壁の吸着部位を変異させ、ファージの侵入を阻止したり、ファージ遺伝子を自分の遺伝子内に取り込んで増殖を抑え込んだり、分解された細胞壁に吸着させて流産感染させ、ファージ遺伝子を失活させたり、するような感染防御機構が存在する。コロナウイルスに対してもこれと同じような機構はないのか、はたまたRNAウイルスの特徴は変異しやすいので、自らが細胞内で繰り返し増殖する時に複製する遺伝子配列でミスし、そのミスが拡大し、ついには増殖する力を失うのか。更には、ウイルスが世間で増殖するにつれて、軽症者やPCR検査で陽性でも無症状の人が増えて、世間全体でいつの間にか抗体を確保する人が増えるのか、などなどと考えるだけでワクワクしてしまう。このようにウイルス増殖の時の基礎的な知見を積み上げ、衰退機構を考えるのが、感染研の仕事だと思う。さらに言わせてもらえば分科会ももう少し学問的になって、より良い対策を提言してほしいものだ。政府の政策に同調するだけではだめだし、エビデンスに基づいて議論してほしいものだ。そのためには数値を正確に押さえるためのデータ採取に取り組まなくてはいけないと考える。また、尾身さんも、尾崎さんもコロナ対策の責任者としてもう少し病床確保に力を注がないと利権にしがみついていると思われてしまうのではと危惧する次第である。
写真:左から児玉先生、尾身先生、尾崎先生
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