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【理事長 明石邦彦のつぶやき】企業出身の吉野さんがノーベル賞 |
2019/10/23 |
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今年も日本人がノーベル賞の栄誉にあずかった。吉野彰さんは旭化成の名誉フェローだ。
受賞理由はリチウムイオン電池の開発である。米国、英国の研究者とともに3人での受賞である。外国の研究者の年齢が97才、78才と聞き、吉野さん自身の71才に比べて随分開きがあり、実用化に向けてそれなりの歴史があることを感じた。
吉野さん自身は何回も候補に挙がりながら、その都度「残念だ」という記者会見を繰り返されたようである。何でも「化学賞は分野が広く、持ち回りなので長年待たされた」ということを話されていた。昨年の本庶さんに続いての受賞となり、日本の科学技術分野にとっては大変名誉なことである。
私は吉野さんの受賞にはいささか思いがある。今年、亡兄の3回忌を行った後での食事会の時に博士号の話があった。わずか8人の会であるが、医学博士2名、農学博士1名という科学系の法事の席である。亡兄の長男はトヨタの研究所でロボットの研究をしており、その人の博士号取得の話となった。
報文はいくつも出しているようなので、論文博士の取得はないのかの話になった。文科省の中教審で「論文博士は望ましくない」との答申が出されたので、義弟の群馬大学の先生によれば取得が難しいとのこと。
待てよ、私の部下だった人は60才で博士号を取得したことは事実である。その話は3年ほど前だよなと思った。いずれにしてもガイドラインはあるかもしれないが、取得の機会があればぜひ取得するようにと言葉を添えた。
このようなことが頭にあったので、吉野さんの博士号取得は中教審前なのかなと思った。57才とすれば14年前である。多分、特許のこともあり、社内での論文博士申請が遅れたのであろうと推察する。かくいう私も30歳前までに論文提出は終わり、企業の順番待ちで39歳の取得になった。
さて、論文博士と過程博士と2種類の博士取得のケースがあるが中教審が論文博士を敬遠する理由はなぜかと思った。理由は、日本独自の制度であること、企業は社員が論文博士を取ると過程博士を採用したがらないことなどが理由だそうだ。
不思議な言い分である。何故なら、応用・開発研究は企業の得意な分野であり、その研究の中で新しい知見は積みあがってくるだろうし、企業から大学に戻り研究者となる人も出てくることも今では普通である。特に、産学連携で競争力を高めようという話もあるではないかと思ってしまう。いずれにしても吉野さんの受賞という快挙は論文博士の有用性を映し出した事件であると思う。
先例として島津製作所の田中さんは東北大学を出て、博士号の取得もなく、論文1本で受賞された方である。文科省のガイドラインなどつまらないことだ。研究者にとってはどこで働いても新しい知見が重要である。ただ、応用・開発研究では企業の業績による影響が大きいので、研究を継続できるとは限らない。
大学では基礎研究を中心に展開した方がよいと思う。基礎をおろそかにすると痛い目に合うのは日本である。さて、論文博士は今でも細々?とは続いているようなので、産官学ともに博士を増やすことにお金を投下する必要があるのではないかと思う。
技術立国を目指すならそうしなければと思うこの頃である。
①受賞会見にて
②リチウムイオン電池
③電池の応用例
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