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【理事長 明石邦彦のつぶやき】バイオ戦略2019 |
2019/10/18 |
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9月10日発刊のバイオサイエンス&インダストリー誌が郵送されてきたので、内容を見てみたらバイオ戦略2019の記事が載っていた。統合イノベーション戦略推進会議で11年ぶりに政府戦略を決定したとされている。誰が書き上げたのかをチェックすると内閣府の人の名前が載っていた。経団連あたりは関与したかは明確にはしりえないが、ポイントが記されていた。
戦略立案のポイントは3点であり、以下のように表現されている。
① 本戦略は人材、投資を呼び込むための戦略
② バイオテクノロジー戦略ではなく、バイオエコノミー形成のための戦略
③ 世界最先端のバイオエコノミー社会(バイオファースト発想、バイオコミュニティー形成、バイオデータ駆動)の実現を目指すもの
私はこれらのポイントを見て、「バイオエコノミー社会を目指すのですか?関連事業の規模は?」という疑問がよぎってしまう。なんでも、単なるバイオテクノロジーの利活用と狭くとらえることなく、それぞれの国家戦略に応じ、バイオテクノロジーや再生可能な生物資源を基盤としていかにして競争力のある経済社会を作るかという視点で貫かれているそうだ。
私の頭の中では「なんでテクノロジーではなくて、エコノミーなの?テクノロジーあってのエコノミーだよ!」と。「バイオが社会の中で活用されている社会とはどういう未来がもたらされるのだろうか」と思う。
一方、「なんだか論点が変ではないか」と思ったりする。第一に日本は特筆すべきテクノロジーを創生することに重点を置かなくてはと。基本特許を抑えることが大事ですよ。応用・開発で争うときは激しい競争となり、疲弊するだけだ。中国や韓国のように応用・開発に資源を大量に投入するところは一時的に優位な立ち位置が取れるが、基盤技術が時代に合わなくなると急速に優位性はなくなり困窮することだろう。
読み進めると、過去の戦略が研究開発を中心にして推進され、シーズ発想で応用分野への対応がおろそかとなり、投資すべき対象やとるべき対応が総花主義で、戦略への産官学の連携的コミットが継続しなかったなどなどと過去の戦略の欠陥を上げ連ねている。
しかしながら、企業は総花投資などできないし、バイオ産業人で作られた組織がシーズ型研究に特化するわけはないと考える。当然利用できる技術を応用的に使い、産業化を図ると思われる。
この戦略は官僚が作ったところにミソがあるように思えた。官僚って奴は目先が違うことを言うのが特性だ。相変わらず変わらない人間集団である。日本はアメリカで基礎研究をし、それにただ乗り論的に過ごしてこられたが、日本も基盤技術を自前で開発していかないと競争世界から置いてけぼりを食らうのではと憂慮する。
さて、戦略の概要には次のように記されている。
1.全体目標:2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現
2.基本方針
① 市場領域の設定
② バイオとデジタルの融合
③ 国際化拠点・地域ネットワーク化・投資促進
④ 国際戦略の強化
⑤ 倫理的・法的・社会的問題への対応など
お役人発想で書き連ねてある肝心の市場領域とは何かと思ったら、9つの市場設定が書いてある。どの辺が斬新な戦略かと思う技術分野である。このような分野設定は誰にもできるのではと思う。国家として特定の研究分野を支援するため、または予算獲得のために言い訳を通そうとしているようだ。実態は官僚が予算をむしり取る根拠作りだと思われても仕方がない。
昔は大きな研究機関にお金が投入され、選択と集中の議論を地でいった活動があったが、次の芽のための基礎研究に資金がいかない現状を心ある研究者は憂えている。大学は基礎研究にお金をかける余裕がなく、若手の教育のための資金で細々と生きているようになった。この辺の状態を官僚はどう見ているのだろう。 応用は企業の責任である。技術立国を考えるなら、基盤のテクノロジー重視で新境地を開拓せねばと思う。研究資金の有効活用などは技術に長けていない省庁には考える能力もないと思うが。
昔は経産省の案作りには下請けとして企業人(世界の第一線で競争している企業の社員)が下書きしたものである。省庁はその案に基づいて、いかにももっともらしく魅力あるキーワードを創生して、予算の拡大を狙っていたと思う。理研とか大型研究機関の研究結果を徹底して評価してほしいものだ。
大学は行き過ぎた選択と集中にならないように、ある程度の自由な研究ができるようにするために研究費の増額を考えるのが政府だろうと言いたい。経産省の役人たちに聞かせたい言葉だ。
下手な産学連携などは国を亡ぼすものだ。筋の悪い、瀕死の事業集団はいくらそれらを組み合わせても再生しないものだ。救済する必要はないと思う。何が没落の原因かを掘り下げ、同じ轍を踏まないように考えることが重要だ。また、産業革新投資機構に良いテーマを見分ける力があるだろうか。テーマの目利きができる人物がいるのか、はなはだ疑問である。だから、投資に失敗しても高額報酬で喧嘩するような低次元の話になるのだと考える。
写真①:官僚が積み上げた戦略会議
写真②:OECDバイオエコノミー社会
写真③:研究者のつぶやき
写真④:筋の悪い事業は救済しない。筋の良いテーマに投資(経産省&産業革新投資機構)
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