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【理事長 明石邦彦のつぶやき】 平成の終わりを迎えて |
2019/4/26 |
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最近のTVは平成の特番が多くなった。寝る前に何となくひねったチャンネルに天皇陛下の全国行脚の番組が映し出された。アナザーストーリーで沢尻エリカが案内役だった。案内役に少なからぬ違和感を持ちながら天皇陛下の足跡をたどる画面に目をやった。いくつかのパートの中で、弱者への労りの旅があり、その例の一つに水俣病が取り上げられていた。石牟礼道子さんの苦海浄土に関心がある同僚がいるので、どのような内容だろうと聞き入った。同僚の方はGWに訪ねてみようとの話もあったので、なおさら注目である。陛下の行動や発言を興味深くお聞きした。下にある写真は水俣病患者の方が天皇陛下に申し上げているシーンである。本人は筆舌に尽くしがたい苦労、もちろん病気の症状もあるだろうが、差別や偏見のゆえに自分が患者であることを隠したりしていた過去を話したようだ。本人がなかなか差別・偏見を乗り越えられず、ようやくカミングアウトし、陛下に己が生き方を述べたのだろう。その言葉を「覚悟があり、腹の座った叫び」として陛下は理解されたと思われる。そして、陛下の自らの感想として「真実に生きるということができる社会をみんなで作っていきたいものだとあらためて思いました。」とおっしゃったようだ。早速、メモ紙にそのお言葉を書き留めた。そのシーンの後に苦海浄土の作者である石牟礼道子さんにインタビューしているところが放映された。亡くなる前の石牟礼さんの姿だが、パーキンソン病を発症されており、ベッドの上での会話である。無表情に近い彼女の口から陛下の印象を「優しい」と表現されたように記憶している。2018年2月に亡くなられているので、その前のインタビューであろう。
さて、書き留めた文をあらためて読み返すと「真実に生きる」ということはどういうことだろうと考えさせられた。真面目に、真摯に生きることではないようだし、単純に嘘偽りのない生活を送ることでもないように思えた。正解がわからないので、ネットでどのように解釈されているのかを調べてみると「真実に生きるということはあるべき自分の生き方に忠実に生きることであり、それを天皇は、すべての個人を励まし、それができる社会へと向かう努力を自他ともに求めたのである」と注釈されていた。改めて深い思いやりを現した忠恕の精神なのかとして受け止めた。「象徴とは何か、国民のために何をやるべきか」を常々考えられた心の優しさには敬慕の念を抱かざるを得ない。去り行く平成を振り返るとともに、これから始まる令和の時代は何が大切にされるのだろうと改めて考える時間が必要である。
写真:①患者との対話 ②陛下は「優しい人」③石牟礼道子さんの晩年 ④苦海浄土
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