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【理事長 明石邦彦のつぶやき】 安全のヒヤリハットの如く、不適切な支援を気軽に出してみよう。 2019/1/28
 志賀先生(元国立のぞみの園)をお招きして3回にわたる発達障害についての研修を行った。中でも虐待防止や氷山モデルが話題となった。不適切支援と虐待との境目ははっきりしないが、軽度な不適切さを組織で論議する風潮が必要である。不適切な支援の事例が増えることによって虐待までに至らない時点で大きな事件を防止できるようになるのではと思っている。こんなことを思うのは安全のヒヤリハットと同じ、身近な不適切行為の警鐘になると考えるからである。企業において安全意識の感度を上げるために月に何度かの安全ミーティングが行われる。その席上ではヒヤリハットの事例紹介があり、また、自分たちがヒヤリした事例が紹介される。そして、安全のポイントなどが協議され、全員で共有化される。気軽に意見が言えることこそが開かれた会議ともいえるだろう。ところが、虐待となると重大な犯罪のように感じる。障害者虐待防止法の制度が始まったばかりなので、行政に報告する案件は懲戒解雇や刑事事件などの重い虐待行為をイメージしがちである。これでは虐待事件の前の不適切支援の教材を集めることはできない。身近に起きる不適切支援を行政の窓口に通報していると行政側から「内部に自浄作用はないのですか」と言われそうだ。緊急性を有する窓口とは違う所に目安箱のようなものを設けて、気楽に届ける制度でも作れたらよいのではと思う。それを受けて市のとか県とかで事例集を発行し、職場の虐待防止に役立てることができるのでは考える次第である。また、氷山モデルも、起こった事件の下に見えないもの(性格・行動・生育歴など)に言及し、原因を追究して解決を図ることが大事である。
 さて、「さん」付け運動を実施してみて思うことだが、単に2語からなる言葉であるが、障害者と同等の立場で人権を尊重している姿勢が垣間見える。自分でも利用者に対して「○○君(20代の若い人)」とかの言葉を使うと言い直したりして大いに反省するものだ。人権を侵害しているのではと自分自身がすぐに気が付く点では優れた内省機能を持っている言葉である。特に、身体や金銭的な虐待にはすぐに気づくものであるが、心理的となるとなかなか自覚できない場合も多い。厳しく注意すべき時でも「○○さん」というと人権を意識した言葉かけとなる。「○○さん」という言葉かけによって利用者に対する上から目線が消えていく感じである。いずれにしても虐待という歴史は時代の変遷とともに変わってきている。昔はよかったが、今はだめとかあるので、人権尊重という観点での理解をさらに育む必要があるといえるだろう。

写真:障害者虐待防止法、事故防止と虐待防止の関係


 



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