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【理事長 明石邦彦のつぶやき】 障害者雇用の水増しについて 2018/9/5
 中央省庁が雇用している障害者数が42年間にわたり水増ししていた問題が浮かび上がり、その実態が明らかになりつつある。一説では総雇用数6600人といわれていたのに、水増し人数たるや3400人との情報も出てきて、2.5%といわれた法定雇用率も1%程度ではと推測されている。また、自治体への聞き取りでも水増しがあり、お寒い限りである。その言い訳も「ガイドラインを理解していなかった」、「拡大解釈をした」、「不注意だった」などとされ、見苦しい限りである。「原則は障害者手帳や指定医の診断書などを持つ人と厚労省が定めているのに」である。一方、民間には障害者雇用が不足していると5万円/月の罰金が科せられ、約295億円が集まってくる。雇用数を規定に沿って考えれば約5万人の障害者が雇われることになる。勿論、企業側の論理には障害者を雇用すると合理的な配慮が必要だし、ノウハウもないので、お金で支払う方が楽だという思惑もあるであろう。一方で、合理的配慮がしやすいように一括して管理する特例子会社の設立を進める企業もあるであろう。民間では罰則があることもあり、障害者を雇用するための努力は惜しまない状況である。しかるに、模範たるべき中央省庁がずさんで、しかも罰則もないことには憤りを感じる。
 それにしても、最近思うのだが、省庁の出す数字の信憑性が問われることが多いと感じる。すでに厚労省では裁量労働の数字が出まかせであったし、また高プロに交通費迄加えた基準を設けるなど、より低所得の人にも適用できるように知恵が絞られている。他のデータでも都合が悪くなるとデータ採取の基準を変えて、見かけ上の数値が高くなるようにされたりするので、正確に統計学的な比較ができないようになっていたりする。これでは真実を知ることが難しい世の中となる。「国民はお上の言う通りにすればよい」では問題だ。
 さて、今回発表の水増しデータで最も多い省庁の3つは国税庁1020人(2.47%⇒0.6%)、国土交通省600人(2.38⇒0.70)、法務省540人(2.44⇒0.80)となっている。TV放映では多くの大臣が謝罪の言葉を表していたが、数字を満たすためにどのような対策を立てるのであろうか。知的レベルの高い身体障害者を雇用し、穴埋めしたとしても省庁での書類積み上げの状態を考えるとバリアフリーになるのかが心配だし、メイルボーイや掃除だけの集団を作ったとしても秘密保守とかの問題もある。対応策として「具体的なイメージができているのか」がよくわからない。加藤厚労省大臣が「誠に遺憾」、「早急に対応」と発言されるが、監督官庁自身がチェックできない現実と自分たちで作った法律なのに守る意思がないと見透かされてしまっている現状では本当に手が打てるのかと疑問に思う。トップの省庁がこのような体たらくでは民間側としてはあきれるばかりである。政府トップの腐りが下までジワリときている世界になっている。特に、国税庁の突出した数値を見ると前長官の不祥事が思い出され、省庁腐敗の象徴とも思える。不祥事には言葉だけの謝罪で、責任をとらなくてもよいのだからこの風潮はますます組織を腐らせることになるだろう。民間なら誰かの首が飛ぶほどの事件である。民間の担当者は障害者一人一人の特性を理解し、その人が力を発揮できるように合理的配慮を行っている事実を省庁はよくよく理解する必要がある。
今朝(8/29)の毎日新聞に水増しの件でJDの藤井さんが述べていたように「障害者団体から見るとこれは障害者差別である。省庁において障害者を雇用すると効率が低下するという考え方が根柢にある」と述べられている。確かに雇用機会が失われていることは人権侵害であるし、また生産性低下の根底には優生思想の流れを感じ、大いなる差別であると言える。「トップがトップなら・・・」とも思えるし、「正直、公正も個人攻撃」という取り巻きの世界では真実・本音は常に隠される時代である。

写真①障害者の雇用問題 ②水増しを謝罪


 



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