社会福祉法人 あおぞら共生会
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あおぞらブログ


【明石邦彦のつぶやき】対等の立場で 2026/9/15
 会議の中で自分の意見を十分に相手に伝えられなかった場面があるとしよう。特に、若い時は相手の立場やポジションなどで、言葉を控えることがしばしばある。自分ながら遜った態度となり、卑屈な考え方が頭の中を占めるものだ。日本語表現では気おされるという言葉で代表されるように自由に発言できない自分の姿を考えがちである。会議の中では相手が社長や大臣だとしたら、その人たちに臆せずにものが言えるかを考えてみると若い人にはなかなか難しいと問題であると思う。
 MLBの大谷選手がWBCの決勝戦で対戦する米国の有名な選手を見る日本人選手に向けて「憧れるのはやめましょう!」と言って日本人選手を平常心に導き、かつ、鼓舞した事例がある。米国のMLB選手に憧憬の念を持っているとついつい相手が格上だと感じるものだ。それでは心理面で相手を格上に見ていることになり、初めから気おされて勝負に負けている気分になることを戒めた言葉なのだ。人間には確かに相手の地位や名誉を考え、劣等感に陥りやすいケースがある。その場合には「障害者支援について自分は相手と対等の立場である」という意識を持って議論することは大切なことである。障害者支援においてその障害者と日ごろからの付き合いがあり、自分がその人の事を一番よく知っていると思わなければ対等の立場での議論にはならない。「利用者の気質から考えるとこのような支援が適切だ」と私は思うというような強い考え方を前面に押し出して議論を行うことが大事だと思う。相手に気おされるような劣等感意識に陥り、自分の考え方を曲げるようではよい支援者とは言えない。その障害者のために十分な意見が述べられなければ困るのはその利用者である。自信をもって率直に意見を述べることが大切である。言葉が少し福祉用語としてはぴったり来なくてもストレートな表現を使って、利用者の心の中を表現する力がなければ問題と思う。私が思うに誰でもが臆病者で、小心者の一面があるものだと思うことである。小心者の心(障害者のすべてを理解しているわけではない等)があるのは誰でも同じと考え、相手がそのような面を表面上見せないのは経験の差であると。このようなことが度重なるにつれて、何となく、いつの間にか度胸が付き、自分の内面をさらけ出さないように知恵を持つようになったからだと思うことだ。色々な人と付き合って、その人なりにごまかし術?を身に着けていらっしゃると思えば、自分がストレートな表現を用いても、相手は傾聴の姿勢で誠実に対応してくれるものだ。そして、議論がなされ、どのような対応が良いのかを皆で考えるようになり、それなりの意思決定支援につながるものだと思う。
 私だって多くの人と対面した過去があるから、ただただ相手を恐れることはない。私は若い時から国会議員や大臣と話す機会に恵まれた。佐賀に5年間異動した時のことである。福中・福高同窓会が年に数回あり、佐賀の一流の料亭にOBたちが集まってきた。社会党の衆議院議員、自民党の厚生大臣、香蘭社社長、佐賀TV役員、JAの理事、大病院の院長などなど、多士済々のメンバーであった。私は味の素の係長クラスだったが、若者として受け入れてくれた。そして、相手の肩書に負けずにお話しさせていただいた。時には幹事役をさせられて、あたふたと連絡する羽目になったこともあるが、片渕病院の院長には特に可愛がられて、色々な指導を受けた。もちろん病院の治療費がタダになったのには困ったものだったが、急病の時にはすぐさま対応(徹之が病気の時)していただいた。この会では佐賀の経済界の動きや国会の運営についての話が出るので、そのような見方があるのかと勉強になり、毎回の参加が楽しみだった。山下厚生大臣(昔は厚生省と労働省とは切り離されていた)には味の素が開発した制癌剤レンチナンの免疫賦活効果の臨床試験の話が飛び出したりして、意見交換もスムーズにできた。また、福岡市の城西橋通りに住んでいた時〈小学5年生まで〉のお隣の同級生である太田誠一さんが総務大臣となったこともあり、政治家には臆することなく話ができた。もちろん、選挙の時は高校、大学の友達に電話し、投票を頼んだこともある。このような経験が日本のバイオ戦略を作成した時には役に立った。江頭社長から命じられて、経団連の牛尾社長と面談しても臆することなく意見が言えた。その後、日本のバイオ戦略をまとめたので、牛尾さんにてきぱきとプレゼンした。牛尾さんから「ご苦労様でした。この案で日本のバイオ産業界をまとめて進めてほしい。江頭さん(味の素)がその先頭に立ってくださいね」とのお言葉をいただいた。2000万円のコンサルタント付きの戦略作りだったが、大役を終えて、ほっとした。後はこの案で産業界をまとめ、各省庁をも巻き込むことになった。バイオ産業界のまとめは歌田元社長の掛け声でひとつの大きな流れをつくることができた。自分ながら誠実な説明で、日本のバイオ産業界の大きな流れを作ったと自負している。
 また、20代後半から取り組んだ研究で博士号を授与されたこともあり、農学博士の肩書も使えるので、大学の有名な教授とも会話はスムーズにできた。
 なお、農水省、経産省、文部省、厚生省の大臣の方にバイオ戦略を話に行き、産業界とのパイプを太くするための活動を行った。官僚には独特の雰囲気(自分たちが日本を動かしているという自負)があり、産業界とは異質なものを感じた。ただ、私の肩書が理事であったので、大臣との面談に付き添う大きな会社の社長さんは「バイオ戦略の説明を任せても大丈夫かな」という心配されたようである。日立製作者の庄山社長は当社の江頭社長に電話して「大丈夫か」と念を押されたようである。江頭社長から「若いけれど大丈夫ですよ」と言われたそうだ。文部大臣への説明の場でも私のよどみない説明を聞いて、庄山社長は納得されたようである。
 このような経験があるために、退職後の福祉世界に入っても、科学的な見地に立って論議する姿勢で、福祉問題に取り組んだ。政治的な動きを得意とするわけではないが、当事者である自閉症の利用者の行動や心理などの研究面からの取り組みの方に関心があった。福祉の専門家の間では変わった事業者のイメージであったらしい。相手からの信頼というか、一目置かれているような気分で、当法人の利益になるような活動に専念できたと思っている。
 そのような経験から見ると、法人の職員は行政や弁護士と会話することには長けていないようで私には不満が残る。なんだか相手の肩書に気おされているようで、遜りすぎて自分の意見を言わないでようで、肩書のある人の主導で物事が決まっていくようである。これでは利用者支援の場でその人のための発言ができないと考える。ただ、論理性を身に着けていないと肝心なところで適切な言葉を発語できないようだ。あるものを利用者が購入したい旨を言った場合、どのようなことを考えて、その品物を購入したいのかの議論が煮詰まっていないのでは意思決定支援は不十分である。
 昔のことだが、コンサルタントの力を借りて味の素のバイオ部門の事業戦略を作ったことがある。その時、まとめをコンサルタントの人の指導のもとに(コンサルタントは私より偉いと思っていた)作ってみた。その結果、受け身の文章となった提言案となった。私のまとめを聞いていた専務から「これでは社長以下の経営メンバーには通じません。経営メンバーがバイオ事業の将来を危ぶんでも、このような提言では積極的な投資をしてくれませんよ。自分の言葉で書きなさい。あなたが一番詳しいはずですよ。コンサルタントはあなたの意見を引き出すのが役割ですから。」と叱られた。専務の仰る通りだと思い、私は当事者意識にたってバイオ戦略を書き直すことにした。コンサルタントは上層部の人が理解できるように、プレゼンの案を支えてくれる立場であると理解した。おかげで新しい遺伝子工学を中心とした最先端の技術を導入できるようになり、また、最先端の設備を買いそろえることが出来た。あらためて、その道では自分が一番知っていると思えば、立場・肩書が幅を利かす世界でも対等な立場で意見を述べることは可能である。そして、その技術やそれを使っての事業の拡大などを思い描くのは自分でなければと思うようになった。勿論、提言するには自分に責任があることも理解した。おかげさまで当社の役員の方に味の素のバイオ戦略の重要性を理解していただいたように思う。この戦略作りにも1800万円も費用をかけていただくとともに、当社がバイオの新しい局面を切り開くように5億円程度の投資が決定された。設備も最新鋭の機器であったので、経産省の大臣から味の素の見学コースを見るようにと推薦されたようである。その結果、今の上皇様が皇太子時代に新しくなったバイオの機器を見ていただいたし、現天皇の浩宮様も細胞培養等の最先端の研究設備を見ていただいた。
 このことから考えると当法人の職員は利用者(障害を有する)のお世話をした経験上、その人の性格から含めて詳しく知っているのは自分であるとして会議に臨んでほしいものである。会議では肩書とは無縁と考え、対等な立場で会議に臨み、率直な意見交換、誠実な対応でお互いが納得いくような論議をしてもらいたいものだ。そして、会議の結果に不満があっても「自分に責任がある」と思ってほしいものである。結果がこうなったのは「自分が意見を言わなかったから」とか、「自分の率直な発言」でもこのような結果しか得られなかったという意識で会議を終了してほしい。結果が自分の意図に沿わないとして陰口を叩いたり、「言いたいことを言えなかった」会議であっても愚痴を言わないことだ。次回に挽回の機会があるように物事を考えていく姿勢が大事である。このようなことを通して利用者のためにという意識で利用者支援を考えてほしいと思っている。





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