社会福祉法人 あおぞら共生会
社会福祉法人 あおぞら共生会 - 川崎市川崎区京町

  トップページ

  最新記事一覧


20243
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            


あおぞらブログ


【理事長 明石邦彦のつぶやき】検査キットの提供 2020/2/13
 ダイヤモンド・プリンセスのクルーズ船客が船内に取り込められて何日間が経過した。その間に症状の悪い方の検査が行われた。その結果、70名が陽性であるということがわかり、病院に収容された。検査のスピードアップが課題である。閉じ込められた人は船内での隔離の不安もあるし、かなりの方が高齢であるので、医薬品が欠乏することへの不安が起きてくる。3700人という方の不安を解消するためにも検査を全員に実施し、ウイルス検査が陽性か、陰性かをはっきりさせることが先決である。そのために、検査キットの開発は喫緊の課題なのだが、遅々として進まない。コロナウイルスの複製がそんなに難しいのかと思ってしまうが、不思議だなと思っている。ウイルスのRNA複製ができるかの話なので、官民挙げて協力すればすぐに開発できるのではと思う。国会では加藤大臣が下船の前にできればとか言っている。米国では4時間で判定できるキットが出来ているし、タカラバイオは中国にもキットを輸出していると聞く。3000人を超える乗船客の検査なら米国製では4セットそろえればでき、1日で判定できると考える。早目に技術導入して国民やトラブルに巻き込まれた人たちの安全・安心を図るべきである。このままでは、船内でウイルスの蔓延となり、感染しない人も早晩汚染されることになりそうだ。政府にはなんとスピード感のない対応だと思ってしまう。危惧したように65名の人の感染が新たに報告された。さらに39人ほどが追加されたと聞く。決断の悪い政府トップである。
 また、船内の消毒はどうしているのだろう通路の壁や絨毯はどのような回数で消毒しているのかなと思う。飛沫やエアロゾルで飛散し、付着したウイルスを殺しているのか、エアレーションすることによって室内や通路汚染も続くのではと心配である。乗客全員を危険な地区から下船させて、小単位で隔離し、防疫を図ることが大事だと思う。船室で隔離してもウイルスは侵入するものである。
 このような結末を考えると昔の*ファージ対策で苦労した実践が頭に思い浮かんだ。味の素の九州工場にいたときの話である。ペルー工場の発酵タンクで発生したファージが収まらなくて、日本からファージ対策を支援することになり、なぜだか私が選ばれた。昔、ファージの研究をしたことがあったので、選ばれたのであろう。九州工場でフェニールアラニンの生産研究をしていたが、一時停止である。ペルー迄はロスアンゼルス経由で27時間くらいかかるので、長旅はイヤイヤだったが、業務命令には抗いがたく出かけた。私自身はあまり大きなプラントを動かした経験がないので、工場全体のことが分かるかなと思ったが、論理的に詰める体質であるので、何とかなるだろうと思った。現地についてプラントを見てみると処理系は樹脂塔を使ったグルタミン酸の精製工程を採用していた。他の工場にはない装置である。到着し、ファージがどこに存在するかを工場のあらゆる個所(100ケ所くらい)にプレートを置いて調べた。空中に浮遊するファージがプレートに落ちて、どれくらいのファージが漂っているのかを確認する方法である。毎日ファージの数を計測した。発酵タンクの周りにファージが多いのは分かるが、樹脂塔付近もかなりの数がいることがわかった。そして、ファージが発見された場所付近は毎日2回ほど**次亜塩を噴霧した。しかし、相変わらず樹脂塔周りにファージの数が多いことがわかった。「どうしてかな」と考えると、処理工程に樹脂塔を使うことが問題であることを発見した。なぜなら、発酵液がその樹脂塔を通り、処理されるために、樹脂塔内は菌とファージが常に混在する状態であると推察した。樹脂塔は発酵液が通過するとその液を完全に送りだすために空気で押し出すやり方のエアブローを行う。その結果、舞い上がった飛沫がプレートに落ちて、ファージが多数検知されることがわかった。樹脂塔の中には生きた菌が存在し、そこでファージが繁殖していることを証明できた。さらに、その付近には低い位置にエアコンプレッサーがあり、エアブローの時の飛沫がエアコンプレッサーに吸い込まれ、それが発酵槽に送り込まれる空気となる。その結果、発酵槽でファージ汚染が繰り返されることがわかった。改善計画も樹脂塔を廃止した処理プロセスに変更すること、次いでエアコンプレッサーも発酵槽などから菌が飛来しにくい地域に設置すること、また空気の取り入れ口を高くすること(30m位)を提案し、引き上げてきた。このような知見は味の素の全工場で適用されている。
 さて、ファージの汚染対策を適用して、今回のことを考えるとクルーズの船内では同じようなことが起きているのではと推察する。まず、通路は次亜塩噴霧で消毒を行い壁や天井までも消毒して、清浄化すること、またエアーもの取り込み口から送風管内までも消毒するなどの工夫が必要である。それが出来なければ早目に3000人を小分割して、病院に送り込み、ウイルスのいない環境で過ごせるように決断すべきである。2次汚染、3次汚染という負の連鎖にならないように配慮する必要があるだろう。
 ただ、船内の消毒については高級な調度品を使っていると思うので、船会社はためらうだろうなと推測する。

*ファージ:バクテリアに取り付き、バクテリア内で50個から100個程度増殖して数が増える。一種のウイルスと考えればよい。
**次亜塩:次亜塩素酸ソーダで、細菌やウイルスの消毒に使う。

写真1.ダイヤモンドプリンセス号 2.バクテリオファージ 3.菌や細胞への侵入





社会福祉法人 あおぞら共生会

〒210-0848 神奈川県川崎市川崎区京町1-16-25 TEL:044-328-7363

Copyright (C) aozora All Rights Reserved.